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市民は現庁舎の耐震性能が極めて弱いと聞かされ

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尾道市庁舎新築への疑問/CityhallProblem01


尾道市庁舎新築への疑問/CityhallProblem01

ネット社会でも重要案件の情報が流れない尾道市

尾道市民は、「現市庁舎の耐震性能が著しく弱い」という尾道市議会の総体質問での市長答弁(山陽日日新聞社記事より)を信じていた。そのため、日本政府の国土強靭化宣言による流れからすると当然、現市庁舎は壊されるものと思い込んでいた。だから「市庁舎を新築するのであれば、どこに建てるか」そんな議論が一部の市民や限られた各種団体の内部で話題となっていたと理解している。
不思議な事に、これだけ進化したネット社会で、尾道市内では、今でも、市民の大半は現市庁舎の新築問題という重要案件に対する正しい情報を知らされていないのだ。「尾道市庁舎を新築する」そんな話が、尾道市の職員も驚くほど唐突に問題となり、第1回尾道市庁舎整備検討委員会が開催されたのが2013年7月5日であった。以降、第5回まで検討委員会が開かれたようだが、Googleで検索すると第4回議事録がなぜか第2回 尾道市庁舎整備検討委員会 議事要旨」としてインターネットに掲載され、2014年1月24日に開催された最終委員会の議事要旨は2014年3月21日現在、未だ公表されていない。
最終の第5回尾道市庁舎整備検討委員会では、数名の委員から新築又は改修の慎重審議がさらに必要との意見が出たが、少数意見として排除されたと聞く。

「尾道の将来を考える会」が勉強会を開催


2014年3月5日午後7時、しまなみ交流館1F市民ギャラリーで三名の尾道市民で結成された「尾道の将来を考える会」の主催で、「新しい尾道の市庁舎を考える−歴史を生かした建築と経済的な耐震補強は可能か−」という第1回勉強会が開催されたので、吾輩はその興味深いテーマに誘われ、トコトコ出かけた。
三名の尾道市民とは、建築家で広島大学大学院准教授の岡河 貢氏(向島町在住)、美術史家で広島女学院大学国際教養学部教授の末永 航氏(久保3丁目在住)、地域プランナーで東京工業大学非常勤講師の西河哲也氏(瀬戸田町在住)という、いずれも尾道を深く愛するアカデミックな構成員だ。
残念ながら聴衆は30名くらいと少なかったが、ゲストに耐震工学の専門家で広島大学大学院工学研究科の准教授・日比野 陽氏を迎え、内容は極めて学術的で、驚くべき市庁舎の真実が正確に明かされた。
不思議なことに、この同じ日の数時間前に尾道市長は記者会見を開き、「市庁舎整備検討委員会の意見を尊重し、尾道支庁舎を新築する」と宣言した。翌日の新聞は一社を除き、第1回勉強会での現市庁舎の耐震性能の研究発表を記載することなく、尾道市長の市庁舎新築宣言を掲載していた。
吾輩はそんな状況を知り、尾道の危うさを感じた。それは24年前の景観運動を彷彿させるものだった。このままでは、尾道がまた大切なモノを失うという危機感だ。(写真は2015年7月25日発行のCasa BRUTUS保存版の一部を抜粋したもの)尾道市庁舎新築への疑問/CityhallProblem01


第1回勉強会で明らかになった事実


第1回勉強会では、日頃考えもしなかった耐震に関する専門的な情報が公開され、次のようなことが理解できた。
●尾道市庁舎は1つの建物ではなく、二つの建物(1960年竣工の本館と1972年竣工の西側の増築棟)が繋ぎ合わされたもの。これは先日2014年3月14日未明に発生した伊予灘地震で、その繋ぎ目部分が壊れたことで証明された。
●尾道市が委託したNTTファシリティーが市庁舎整備検討委員会に提出した耐震データによると、市庁舎の西側増築棟は極めて弱く、これは解体するほかない。また本館の耐震性能は、東西方向では、国が示す地方公共団体の建築物の目標Is(耐震指標)=0.6又は0.75に十分匹敵するほど極めて強い。しかし南北方向がIs=0.3を下回っている階があり、市庁舎全体を大地震により倒壊又は崩壊すると結論づけている。
このことは素人の吾輩でも疑問を感じるところだ。1960年当時、東の丹下健三(東京大学)・西の増田友也(京都大学)といわれるような日本を代表する建築家たちの設計する構造に欠陥があるとは到底思えない。耐震診断に見落としがあるのではないだろうか。例えば、エレベーターや階段部分のコア構造の評価をどのようにしているのか。日比野准教授あるいは第三者の専門家による、より慎重な調査が必要だ。想像力たくましく、心配性の吾輩は「仮にコア構造の正しい評価がさ
れていないとしたら、大変な問題となる」とドギマギするばかりだ。もし本館そのものが、耐震補強をしなくても、国の示す地方行政の建築物のIs値をほぼ満たしているとしたら、それを解体してまで新築するということは何を意味するか。言わずもがなである。ちなみにIs=0.6の建物は東日本大震災でも倒壊しなかったと聞く。
尾道市庁舎と尾道公会堂は建築家・増田友也(1914-1981)の設計によるもので、1972年竣工の市庁舎の西側増築棟は、1970年代の日本全国的な建築ラッシュで、海砂を使った質の悪いコンクリートで建てられたものだ。
< ●日比野准教授の見解では、「市庁舎本館は、現在NTTファシリティが示すIs値をベースに、耐震診断の最も低い第1次を想定しても、耐震補強工事で2億もあれば、尾道市が新築庁舎の目標とする国の官公庁の建築物のIs=0.9と同等の耐震性能を確保できる」という。これで「尾道市庁舎を耐震性能が著しく弱い」という見解は、明らかに解体すべき増築棟の耐震性能を強調し、二つの建物からなる市庁舎を、さも一つの建物として、強引に評価していると言わざるを得ない。この勉強会で示された見解が真実であれば、尾道市は尾道市民に対して情報制限や情報操作を行っていることになる。
●市庁舎整備検討委員会で説明された、現市庁舎と公会堂を解体して跡地に新市庁舎を新築するという案以外のすべての補強改修案にも、耐震工法ではなく免震工法をコスト算出に採用している。これは誰でも判ることだが、新築以外で既存の建物に免震工法を採用することは、重要文化財のような建築物以外では採用しない、それは驚くほどコストのかかる工法だ。どうしてその工法を採用して、新築案との比較を行うのか、不可解きわまりない。
ちなみみ喫緊の課題である尾道市内の小中学校、高等学校の耐震性能を確保する工法は、すべて耐震工法による鉄骨ブレース(事例:広島県立尾道東高等学校)を使用している。尾道市庁舎新築への疑問/CityhallProblem01

●最近、情報収集したことだが、尾道市とNTTファシリティが採用している免震工法というのは、地震力を極力受けないように、建物の地下に積層ゴム等を充てがう方法だ。この工法は、尾道のような海岸では地震による高潮が懸念され、採用されないという。地下の免震装置に海水が流入し、浮力によって建物が積層ゴムを上下に引き延ばし、余震によってはゴムが破損し、建物が倒壊する可能性が否定できないからだ。
●決定的なのは、現市庁舎本館を鉄骨ブレースで耐震補強することで、増築棟を解体した広さと同等のものを本館の東側に新築するか、あるいは公会堂を再利用することで、建築コストを大幅に下げる(約20億円以上)ことができ、建築家・増田友也の設計した文化的価値の高い1960年代の尾道市庁舎と尾道公会堂を後世に引き継ぐことができる。
  尾道市公会堂は、その建設計画が遠く明治44年(1911年)に遡り、紆余曲折を経て、昭和37年2月10万市民の絶大な協力を得て着工した。総工費は、当時のお金で1億8,292万4千円、その半額強の実に1億300万円(中国新聞3/30付記事より)が市民と企業よる寄付で、昭和38年(1963年)3月に竣工したものだ。その特徴ある壁面構造からも耐震性能は今も極めて優れている。また市庁舎と公会堂は海辺の埋立地に建てられたものだが、半世紀あまりを過ぎた現在でも地盤沈下を起こした事実はない。
日本建築学会中国支部は、この市庁舎本館と尾道市公会堂の保存活用の要望書を2014年2月17日付で尾道市長宛に提出している。
●コンクリートの寿命は、長いものはローマ時代のもので千年を越える。当然ながら、メンテナンスによっては100年、200年〜300年も大丈夫だ。現状のコンクリートをそのまま今後も維持できる技術は確立されている。これについては、東京大学の野口貴文教授が2013年6月に文部科学省の委員会で発表された「既存鉄筋コンクリート造建築物の調査・診断・余命予測・補修の現状」の一部を掲載する。
尾道市庁舎新築への疑問/CityhallProblem01
●IT革命で加速度的に変化する20〜30年先の社会を誰が想像できるだろうか。30年後の世界は今の我々には予測もつかない。だが、尾道市舎へ多くの市民が来庁する用件(市民課や市民税課等)は、確実に激減する。都市は縮小し、市の職員数も尾道市の人口減に比例して、大幅に減少することも確かなことだ。
●今後も大都市集中化が進む中で、コンパクト・シティを実現できない地方都市は、確実に経済的に疲弊すると考えられる。尾道も例外ではない。そんな地方都市が、今後、右肩上がりに経済成長することは至難の業だ。尾道市の現在の人口15万人が30年後には、10万人に縮小すると統計データも出ている。無謀な市庁舎新築案を実行し、今の若者達に多額の負債を負わせることはあってはならない。

知れば知るほど、不可解な話


これだけ専門家の分析結果と吾輩の貧弱な思考能力を駆使して考えた数々の情報を列挙すれば、吾輩だけでなく、尾道を愛する多くの精神的市民は、尾道市が市庁舎の新築を急ぐ理由が全く理解できないのではないだろうか。
尾道市に対して改めて正確な情報を尾道市民に改めて開示していただくよう要求するのは、尾道市民の義務ではないかと考える。
現状、尾道市長が市庁舎の新築を強力に推進している以上、市民一人一人が責任を持って、(1)多額の負債(建築費)を背負ってまでも、補強工事により耐震性能を確保できる現尾道市庁舎と公会堂を敢えて解体して、その跡地に市庁舎を新築するか、あるいは(2)負債を大幅に縮小し、しかも文化的価値のある現市庁舎と公会堂を保存活用しながら、現市庁舎を耐震補強し内部を改装、さらに解体する増築棟に代わる面積を知恵を絞り確保するという、二者択一をしなければならないだろう。
この場合、なぜ多くの観光客が今、尾道を訪れているのか、現代人を引きつける尾道の魅力とは何か、を真剣に考える必要がある。尾道という歴史都市は、旧市街地においては歴史を生かしたまちづくりを軸にしながら、具体的なまちづくり戦略を構築し、その実現に向けて一歩一歩着実に体制を整える必要が急務であると考えるの吾輩だけだろうか。

<尾道の将来を考える会 第1回勉強会−報告書>


◼️はじめに

先般の2014年3月5日記者会見で、尾道市長は、広域合併特例債を活用して新庁舎を建設することを正式に表明されたが、その新庁舎建設の決定は極めて不可解である。またこの日はどういう訳か、記者会見が急遽、「尾道の将来を考える会」の主催する第1回勉強会の5〜6時間前に設定された。翌日の新聞報道は、勉強会の内容を報じた新聞社は1社のみで、他社は平谷市長の新庁舎建設の決定を報じた。そのため、多くの市民、報道関係各社に「第1回勉強会」の内容を正確にお伝えする必要があると判断し、このたび、その要旨をまとめ皆様にご案内いたします。
*現尾道市庁舎本館(鉄筋コンクリート6階建て5,040.9u)は1960年に、尾道市公会堂(鉄筋コンクリート造2階建て1,045席で、建設には、市民による多額の寄付が寄せられた。)は1963年に京都大学教授で建築家の増田友也(1914-1981)の設計により竣工され、その後 1972年に市庁舎を増築(2,434.20 u)した。

◼️テーマ「新しい尾道の市庁舎を考える」 – 歴史を生かした建築と経済的な耐震補強は可能か –


研究報告: 岡河 貢(建築家・広島大学大学院准教授)・ 日比野 陽(広島大学大学院准教授・建築耐震工学)
司会進行:末永 航(美術史家・広島女学院大学国際教養部教授)・ 西河哲也(地域プランナー・東京工業大学非常勤講師)

2014年3月5日午後7時しまなみ交流館市民ギャラリーで開催された第1回勉強会の概要は次の通りである。
1. 尾道市庁舎は1960年に建てられた本館と、1972年に建てられた増築棟の2つの建築物を接合していること。これらは構造的に独立している。
2. 西側の増築棟(1972年竣工)はコンクリートの耐震性能が大きく損なわれており、解体するしかない。
3. 1960年に建てられた本館は鉄骨ブレースの補強によって十分耐震化が可能である。
市が要求している耐震性能(Is=0.9)を満たすためには、南北方向に4〜6カ所の鉄骨ブレースを追加するだけで良く、金額は多くて2億円くらいで十分な耐震性能を確保するであろう。
4. 耐震診断の方法には3つの診断方法(1次、2次、3次)があるが、今回の検討は最も簡単な1次診断で検討をしている。1次診断は安全側で見積もる方法であり、2次、3次診断を実施し、庁舎の耐震性能を精査すれば、この補強計画案よりもさらに補強が少なく済む可能性もある。1次診断は柱と壁の断面積からそれぞれの部材が有するおおよその耐力を計算するものであり、床面積と比較して断面積が多いほど耐力が大きく、耐震性能があると予想できるものである。
5. Is(構造耐震判定指標)は耐震性能を表す指標(高いほど耐震性能が高い)であり、耐震補強後にIs=0.6以上を満たす必要がある。官庁施設では施設の重要度によってIs=0.6〜0.9とする必要があり、国の各省庁はIs=0.9、地方行政では0.75又は0.6が要求される。尾道市庁舎は国の各省庁と同等の耐震性能を目指していることになる。
6. 市庁舎本館棟のコンクリートは十分な強度を有している。一部中性化しているが、修復は可能であり、補修・保全に関する技術により、劣化の進行を防止すれば、現状の耐久性を維持することが可能である。
7. 市庁舎の業務を行いながら本館の耐震化と増床をする方法がある。第1期として、本館棟東側に西側の1972年に増築された部分と同じ面積の増築をする。(この時、市庁舎は7,500uとなる)第2期として、本館棟西側の1972年に増築棟を解体する。その後、同じ面積の増築等を建設する(この時9,000uとなる)。
8. さらに増床が必要ならば第3期として北側に1階ピロティとし、道路側に1スパン×11スパン増築する(この時12,000uとなる)。この工事期間中、1階から6階まで補強工事の順番に仮設庁舎が必要となるが、公会堂のロビーを仮設として使用すると仮設費用は少ない費用で済む。さらに公会堂の構造は内部をがらんどうに出来る構造なのでそれを活用して、防災施設としても使えるように、1階を駐車場、2階を平土間の空間としておけば、公会堂を機能変更し、3億くらいの資金で仮設庁舎の必要なく工事が可能となる。
9. これらの事業費を総合しても、現在尾道市が進めようとしている、公会堂解体後の新庁舎(12,000u)の52億と比較して約20億円コストダウンとなり、防災拠点としての耐震性のある市庁舎と防災的な建築として機能変更された公会堂をどちらも残し、活用することができる。
10. 市庁舎整備検討委員会で検討されてきた耐震補強案の内容を精査してみると、実に興味深いものが見えてくる。現庁舎をそのまま使用し、耐震性能の向上をめざすというすべての案に、既存の建築物に対して採用するには膨大なコスト高となる免震工法による耐震強化工事を前提としていることだ。これは鉄骨ブレースを採用する工法のコストより、おおむね7〜8倍が必要となる。さらに耐震性能が極めて悪く、解体しなければならない1972年竣工の増築棟の耐震補強工事のコストまで加算し、市庁舎並びに公会堂を解体し新築するという案のコストと比較検討していることだ。また重要文化財等の建築物に多く見られる免震工法は海岸に近い建物には採用されない。それは免震装置のある地下に海水が流入した場合、海水の浮力により建築物が押し上げられることで免震ゴムが引き延ばされ、余震によりゴムが破損し建築物が倒壊する可能性があるという。海岸線に位置する尾道市庁舎はもっとも高潮の被害を受けやすい場所に位置するが、そうした免震工法の弱点をなぜ採用するのだろうか。

◼️勉強会テーマ「新しい尾道の市庁舎を考える」について


2014年1月17日は、建築家・岡河 貢氏が、尾道市のためにと昨年から市庁舎整備検討委員会で検討されてきた耐震補強の約8〜9つの工法にはない、極めて経済的で新しい工法を市長に面談し、提案した日であった。この新提案を説明し、検討委員会の一つの案として取り上げてもらえないかと市長に打診したが、回答は検討すべき内容ではないと即座に断られた。
この日をもって、広島大学大学院准教授で建築家・岡河 貢、広島女学院大学国際教養学部教授で美術史家の末永 航、東京工業大学非常勤講師で地域プランナーの西河哲也という三名の尾道市民で構成された「尾道市の将来を考える会」が結成された。吾輩はそのお手伝い役となり、さしずめShadow Secretariatというところか。
尾道市は「現庁舎の耐震性能が著しく低いため」と市議会や市庁舎整備検討委員会で説明しているが、実際は増築棟を除けば極めて耐震性能は極めて高く、岡河氏が提案した工法によると、尾道市が目指す新築工費50〜60億円より約20億円コストダウンして、耐震性能を向上させ、市庁舎の新築同様の内部改修も行うという画期的な工法だ。
財政が緊迫している尾道市にあって、国が工事費の7割を負担し、尾道市が3割だけ負担すればよいという合併特例債だが、それらはすべて国民と市民の借金となって将来跳ね返ってくる負債だ。そしてこれから先30年間で、尾道市の人口は3割減少するということも考えると、知恵を出し将来的な尾道市の負担をできる限り軽減することが行政には求められるはずだ。
八百有余年の歴史をもつ尾道市で、過去に大地震に見舞われたという史実は見当たらないが、尾道市長の「市庁舎と公会堂を解体し、公会堂の跡地に国レベルのIs=0.9の市庁舎を新築する」という考えを思いとどまらせなければ、1990年に起きた旧市街地の高層マンション建設計画に端を発した景観問題と同様、尾道市にとって大切な資産を再び失うことになり、合併特例債を使ったここ数年の大学施設建設や喫緊の課題である小中学校舎の耐震補強工事、さらには今後広域合併による多くの行政関連建築物の耐震化工事とともに、尾道市の財政状況を将来的に圧迫してゆくことは目に見えている。
建築家・岡河 貢氏が提案した現市庁舎の増築部分を解体し、鉄骨ブレースによる耐震補強と東側に解体部分と同等のものを新築するという案を採用した場合、1960年代の日本の公共建築で極めて数少なくなった優れた尾道市庁舎と尾道市公会堂を保存活用し、後世に伝えることができるという大きな結果を獲得できる。この二つの建築物については、日本建築学会中国支部が、平谷祐宏尾道市長宛てに「尾道市庁舎本館と公会堂の保存・活用に関する要望書」を2014年2月17日付で発送している。尾道市庁舎新築への疑問/CityhallProblem01

尾道市は2012年6月6日に文部科学大臣、農林水産大臣、国土交通大臣より「尾道市歴史的風致維持向上計画」の認定を受けている。そして2007年4月1 日景観法に基づく景観計画と景観条例、景観地区(都市計画)を規定し、歴史を生かしたまちづくりを推進するという旗印を掲げてきた。耐震性能が優れ、しかも文化的意味のある二つの建築物を破壊し、新たに市庁舎を建設するというスクラップ&ビルドの手法は、市がすすめてきたまちづくり政策と明確に矛盾し、現在、日本建築学会の要望により潮流となりつつある歴史を生かしたまちづくり(ex.東京の国際文化会館や米子市公会堂)を放棄しての無謀な発想であるといわざるを得ないのではないか。
尾道だからやらねばないことがある。それは歴史を生かしながら、理性的にものごとを判断し、あらゆる知恵を結集して、歴史都市・尾道の魅力を後世に伝えていくことである。そのためには尾道市長の判断を思いとどまらせる「声」を、尾道の市民とともに日本中の尾道ファン、あるいは世界中の尾道ファンから発信いただけることを期待している。
*研究報告者及び司会進行者の肩書きは、2014年当時のもの。

尾道にふさわしい歴史を生かした建築と経済的な耐震補強は可能である!!


 
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